2011年2月15日火曜日

5億人が集うSNSフェイスブックがどうやって創られたかが理解できる本『フェイスブック 若き天才の野望』を読んだ

フェイスブック 若き天才の野望』を読了、非常に読み応えのある本でした。

ユーザー数5億人、時価総額2兆円の今最も旬なSNSサービス facebook。 この本は、そのfacebookの2003年から2009年までを膨大なインタビューを通して書かれた本です。ちょうど設立前年から、MySpaceを追い抜き世界最大のSNSサービスとなった時期にあたります。

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映画『ソーシャル・ネットワーク』と本『フェイスブック 若き天才の野望』

本書を読む前にみた映画『ソーシャル・ネットワーク』はスリリングでインターネットに詳しくない人でも充分に楽しめる映画でした。ただ Facebook と マーク・ザッカーバーグ を正しく描くというよりは 急速な成功を収めるネット企業とその創業者たちとしてデフォルメして映画用に味付けして描かれているようでした。

マーク・ザッカーバーグは恋人ともコミュニケーションが取れない変わり者に描かれていますし、ベンチャー・キャピタルにパジャマ姿で訪問する場面すらあります(一部実話なのですが本書に詳しいです)。ちなみに映画の原作は『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男 』で別の本。こちらは未読ですが楽しむための本なのかも。


『フェイスブック効果』は膨大なインタビューを元に

本書の原題は『The facebook Effect』。facebook がどういう影響を及ぼしたのか、について書かれています。誰に対してか? サービス開始当初はハーバード大学生、そしてアイビーリーグの大学、さらには全ての大学生から一般人へ。そして同時にベンチャー・キャピタルや広告業界、最終的にMicrosoftやGoogleにも大きな影響を与えていきます。

さらに映画の原本と大きく違うのは、CEOマーク・ザッカーバーグ本人などに膨大なインタビューをしているところ。当然マーク・ザッカーバーグを正当化するような部分は割り引く必要がありそうですが、充分な情報を元にしていてノンフィクションとして読むにはオススメできます。

本書によると、マーク・ザッカーバーグは高校時代フェンシング・チームのキャプテンで優秀な選手だったらしい。更にはいたずらっぽい笑顔で常にガールフレンドがいたらしいのです。。。


第5章『投資家』と第10章『プライバシー』

この本でどこを読むべきかと尋ねられたら、第5章『投資家』と第10章『プライバシー』を推します。

第5章『投資家』では資金調達時の成功と迷いが描かれています。2004年末にはワシントン・ポスト社CEOドン・グレアムから投資の打診を受けます。設立半年足らずで490万ドルと評価され、さらに1年でMTVを傘下に持つバイアコムは同7500万ドル(Google最初の大型資金調達と同額!)と。1年でざっくり60億円。インターネット史上最速と思われる投資額と投資にまつわる人間模様はハラハラするものでした。創立4年目の2008年には、MicrosoftとGoogleが繰り広げる検索戦争で150億ドルとなっていくのだから読んでいても凄いスピード感がありました。

さらに第10章『プライバシー』。ここにはSNSを使う上で理解すべきオープン化とプライバシーについて書かれています。マーク・ザッカバーグは、『アイデンティティーはひとつだけ』という考えで facebook のオープン化を正当化していきます。しかし facebook によりオープンになった情報により様々な出来事が起こります。これは日本でも mixi などで悲惨な事件が起きたのと同等ですが、実名登録、オープン化を目指す Facebook ではより顕著な形として現れます。またこれ以外にも、友達にこちらの活動をfacebook上でどこまで pushさせるか、という部分では随所に試行錯誤が繰り返されていることが分かります。本書を読むことで、自分がオープンにする情報でどんな不利益を被る恐れがあるかを理解する助けになると思います。

実は facebook は使ってません。がオススメです!

個人的には現状 facebook ほとんど使ってません。ただし本書は非常に意味のある本でした。Facebook 自体が好きかどうかは別です。

Appleの創業本は勿論ですが、過去に読んだGoogle創業時の本2冊と同じように時代の中心となる一つの会社の歴史を通して時代背景が再確認できました。創業間もないGoogleが検索を極めることで広告収入に活路を見出したように、facebookがネット上のコミュニティー活動を囲い込むことで、Google以上に細かく個人活動からターゲティングしていく。そういった時代の変化と facebook 自体の成長の過程がよく分かりました。

この本、単なる facebook史には興味がなくても、今後のSNSの方向性、広告の方向性を知る上では凄く参考になる一冊だと思います。



最後に
この本は、ジョブズのプレゼン本でもおなじみの、日経BP社の編集 中川ヒロミ (@hirominakagawa) さんからいただきました。映画を見終わった絶妙のタイミングでした。感謝いたします。