今月9月28日に映画『スティーブ・ジョブズ 1995 〜失われたインタビュー〜』が公開になります。
先日から映画サンプルをお借りして繰り返し観ています。このインタビュー映像は生のジョブズを知る上で、有名な卒業式スピーチよりも重要な映像です。
生のジョブズを知るうえで重要な映像
アップルを創業、一度追い出されるも倒産寸前に戻り iPod や iPhone の成功で時価総額世界一の企業にしたスティーブ・ジョブズ。そのジョブズがアップルに復帰する1年半前、1995年に撮られた70分のインタビュー映像です。
この映像が貴重な理由の一つとして、撮影された1995年前半という時期があります。
Macintosh開発時機の同僚について質問を受けるジョブズ |
1995年NeXT時代のジョブズ
ジョブズのNeXTは業績不振で1993年にハードウェアから撤退。Pixarも「トイ・ストーリー」公開直前。プライベートでは1991年に結婚し、1995年は二人目の子どもが生まれる年です。
アップル創業と株式公開で若くして時代の寵児となった後、権限を奪われ辞職、新会社NeXTも不調だったジョブズ。一方で結婚、長男長女誕生と家庭的な幸福を得て、ジョブズの生い立ちを考えても最も大きな変化があった時期でした。
またインタビューを嫌ったジョブズが、これだけ長い時間受け答えしている映像というのはほとんどありません(他にはAll things Dくらい?)。当時は一流の経営者とは認識されていなかったジョブズがどういう考えを持っていたのかを知ることができる貴重なインタビューです。
どうして長時間のインタビューを受けたのか、またインタビュー自体が素晴らしい理由は聞き手、インタビュアーにもあります。
当時、最も影響力があったジャーナリスト、ロバート・クリンジリー |
聞き手ロバート・クリンジリー
聞き手ロバート・クリンジリーは、1992年に出版した名著『コンピュータ帝国の興亡』で、マイクロソフト、アップル、インテル、アドビやIBMなどの初期コンピュータ群像史を描きベストセラー作家に。当時最も影響力を持つジャーナリストの一人。
ジョブズのインタビューも、1996年に放映され今でも評価が高いTVドキュメンタリー『The Triumph of Nerds(オタクたちの偉業)』という番組用に撮られていて、決してジョブズが主役というわけではない状況でした。
インタビューを聴いていてもクリンジリーとジョブズの間に微妙なやりとりがあるのが分かります。
質問に爪を噛み否定するジョブズ。 |
普段のジョブズなら不機嫌になってインタビュー自体が中止になりかねない内容。クリンジリーは一方で、ジョブズの情熱やビジョンを尋ねたり、ジョブズが思わず考え込んでしまうような鋭い質問を投げかけていてインタビューに緊張感を与えます。
最後にジョブズはパソコン創世記に関われた幸せを語り、さらにより正しい方向に動かしたいと言います。対してクリンジリーは「正しい方向を見定めるには?」と質問。ジョブズはここで考え込んで、話し始めます。個人的にはこのインタビューの中で最も好きなやりとりでした。
上記の映像を含む15分の特別映像が、Gizmodo経由で公開されています。
70分の映像では他にも魅力的なジョブズの言葉が満載です。逆に18年経った今だからこそジョブズのビジョン、先見性がよくわかります。
ぜひ残りは書籍や映画館でどうぞ。下の書籍の目次は、この映画の目次でもあります。「コンピュータ帝国の興亡」も当時の様子が分かってオススメです。
■本「ロスト・インタビュー」日本語版目次より。
人生を変えた「12歳の夏休み」/「やってみればいいさ」/21歳で気づいたビジネス常識のウソ/コンピュータが教えてくれること/そ の時、未来が見えた/なぜ一度成功した企業は失敗するか/IBM、アップルが勘違いする瞬間/日本の自動車工場を訪ねて/何がすばらしい製品を作り出すの か/優秀な人を使う方法/未来を予見して/アップルを去った理由/いまアップルは死にかけている/「マイクロソフトは日本人のようだ」/可能性はソフト ウェアにある/10年後のコンピュータはこうなる/これこそ人類最大の発明
関連するサイトや参考URLなど
・Triumph of the Nerds - Wikipedia, the free encyclopedia
・Accidental Empires - Wikipedia, the free encyclopedia
・Robert X. Cringely - Wikipedia, the free encyclopedia
ジョブズの卒業式スピーチを字幕で | トブ iPhone
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