2014年7月2日水曜日

「病気にならない生き方」とは? スティーブ・ジョブズのコンサルタント医師による健康のススメを読了

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スティーブ・ジョブズの医師でもあったガン研究者デイビッド・B・エイガスのベストセラー本「ジエンド・オブ・イルネス 病気にならない生き方 」を読了しました。

以下、3部構成となっている本書の読書メモ的に。

第1部 あなたの健康を定義する科学と技術
この本は、「がんによる死亡率」がこの50年でほとんど変わってないことを指摘して始まります。「米国第一線がん研究者」デイビット・B・エイガスは、これを「細菌学」の隆盛による厄災とみて、遺伝子分析の限界とタンパク質研究の「プロテオミクス」の重要性を説いています。プロテオーム解析 - Wikipedia

疾患別に見た環境要因と遺伝要因」を示して、例えば肥満は33%が環境要因で、67%がSNPsと呼ばれるDNA配列変異によるとされていますが、運命ではなく環境コントロールによりリスクを激減できるとしています。

また本書では次のように引用しています。「DNAは全体の設計図というよりむしろ、部品のリストだ。」そして、レストランに例えると料理の素材リストだとしながら、素材が確かでも調理に相当する「タンパク質を作るプロセス」の大事さを強調しています。


第2部 健康的な生活の要素
第2部はビタミンDサプリメント摂取に対する懐疑で始まります。 喧伝される効果に反して、信頼できる証明がないのだとか。ここでは映画も話題になった「ヤバい経済学」を紹介し「あいまいな相関」と直接の因果関係についてのコラムがあり、「全ての人に効果があるとはいえない」という委員会の結論を引用しています。

またビタミンD摂取が不要であるとすれば、本来ある体の「恒常性(ホメオタシス)」を保つ力に干渉するとし、必要のないサプリメント摂取に注意を呼び掛けています。同様に他のビタミンなどについても正しい食生活で補給するよう伝えています。

例として、腹八分、規則的な食事時間、週3度以上の冷水魚、などなど。また「ヘルシーな加工食品はかなりヤバい」を食に関する最良の書としてすすめていました。



第9章では、炎症を抑える重要性が説かれています。炎症は自然な防御反応ながら、度を超すと害を及ぼし、免疫システムの混乱から慢性的な障害や疾患になる恐れがあるそうです。慢性的な炎症はDNA修復プロセスを停止させるのだとか。

ここではNFLの選手の事例や、修道女の脳を研究をまとめた本「100歳の美しい脳―アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち」などを用いて紹介していました。また同時にインフルエンザによる長期的で激しい炎症は、永続的な負の影響を及ぼす恐れがあるとしてワクチン接種を推奨していました。

また運動についての推奨も。2階建てバスの車掌と運転手での調査、郵便配達員と公務員の調査を紹介。理想として「有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチを含むバランスの取れた包括的な運動プログラム」を推奨しています。驚くべきことに、1日2時間運動しても座るか寝るかで過ごす22時間を相殺できないとのことで、最近よく言われることながら長時間の座りっぱなしが非常に悪影響であることがわかりました。

最後に規則正しい食事と睡眠の重要性が。食事は回数よりも時間、起きる時間も一定にすることが大事とのことで、犬を飼うと自然に規則正しい生活になるのでオススメとのことでした。


第3部 未来のあなた
第3部では最新の技術の紹介と準備として、最初に医療情報の共有を推奨。Google.orgのラリー・ブリリアントが行った「Google インフル トレンド」によりCDCより早くインフルエンザが察知されたことを紹介し、ゲノミクスとプロテオミクスの情報共有が進んだ未来への希望を語っています。

さらに個人の医療データが公衆衛生向上のために記録・検討・分析されることで、医療間連携もできるし、急な事故に役立つデータが活かされる可能性があること、何より社会が切望する健康管理システムの改革になると語っています。
 
そして最後に。改めて体の自然治癒力を尊重することを推奨しています。規則正しい生活、食事、運動など。将来的にほとんどの病気が予防したり、進行を遅らせたり、魔法の薬が20年後に手に入るだろうと楽観的希望を持っているのだとか。

*     *     *

以上、 「ジエンド・オブ・イルネス 病気にならない生き方 」について書きました。本書には裏付けとなる情報はもちろん、次のような内容も書かれています。
  • 「健康チェックリスト」
  • 「血液検査で調べてもらうリスト」
  • 「診察室を出る前に尋ねること」
  • 「遺伝子テストでわかること」
  • 「健康のルール:正しい食生活」
  • 「がんや晩年の認知症のリスクを減らすために、今すぐ出来ることベスト10」

書店で散見する裏付けのない健康法などと比較して、第一線の医師がエビデンスレベルの高いデータを集めたうえで、著者が信じる「病気にならない生き方」を紹介する内容でした。

健康について深く考えるよい機会になりました。気になる人は是非、書店で手にとって見てほしいと思います。

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ジエンド・オブ・イルネス 病気にならない生き方

 
One more thing...

デイビット・B・エイガスとスティーブ・ジョブズ
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「スティーブ・ジョブズの医師」という部分について少し。

まず著者デイビッド・B・エイガス(David B. Agus)は、南カリフォルニア大学クック医学校教授、USCウエストサイド・がんセンター長および応用分子医学センター長。アプライド・プロテオミクス社ナビジェニクス社を共同設立。(本書より)

W. アイザックソン著の「スティーブ・ジョブズ II 」第40章 「第3ラウンド たそがれの苦闘」。2011年1月のミーティングで療養休養を決めたジョブズ。スタンフォード大の専門医チームの連携がうまくいってないことに対して、積極的な統合アプローチを推進する医師として招いたのがデイビッド・エイガスと書かれています。

ジョブズのがん細胞とふつうの細胞のDNA配列を全て調べたようで、この当時10万ドル以上の費用を掛けた患者は世界で20人だけだったとか。

また「もうすぐがんは慢性病として管理できるようになる、ほかの原因で死ぬまで抑えておけるようになる、そういう希望があるのだ」とジョブズに伝えた医師がいたと書かれていますが、本書を読んでこの人物はデイビッド・エイガスではないかと思いました。


ジョブズはそれに対してこう答えたのだそうです。
「こういうがんを乗り越える最初のグループに入れるかもしれないし、がんで死ぬ最後のグループに入ることになるかもしれないというわけだ。海岸にたどり着く最初のグループかおぼれ死ぬ最後のグループか、だ」

スタンフォード大学卒業スピーチの後日談「人生ははかない」 | Steve Jobs museum

 講談社、話題の伝記『スティーブ・ジョブズ』の「主な登場人物」「参考文献」「人名索引」をPDFで配布 | トブ iPhone


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